-KAORI-

腰に巻かれた健の腕をはらうのも忘れていた。

“それ、もう俺の女じゃねぇよ”

“やることは出来るだろ?”

頭が真っ白になりそうだった。

―あたしは物じゃない。

「触るな!どうせ、シンナーとかやってるんでしょ!それに、あたしはあんたの物じゃない!あんたから、別れたとか言われる前にあたしから終わるよ!」

この部屋のきつい匂いは、シンナーだってことをあたしは知っていた。

目の前の男と、巻かれた腕を払い、部屋を出た。


――終わった。

あたし、やれるんだ。
この時から、あたしの中は壊れていったんだ。
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