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「な、なんと人がいる。犬まで・・・。なんなんじゃ？」
怯えている様子から察するに、どうも無数の目たちは刺激が強すぎるようだ。老人はまた糸に力を込め、形態を変化させた。今度は球の周りに小さな目が一つと、口を一つだけにしてみた。
「おい、お前達。」
声が聞こえた。聞いた事のない声だ。
「うわあああああ。ごめんなさい、ごめんなさい。」
ふたりとも、目を開けちゃダメだ。そう思ってうずくまっていた。その状態で、謝りまくった。
「そんなに怯える必要はない。こんな事しているんだから、お前達、言術は知っているのだろう？」
聞き慣れた単語を聞いて、僕たちは少し冷静になった。
「こ、これって言術なの？」
じいちゃんの言術は、こんな薄気味悪い感じじゃなかった。だから、言葉を全部信じる気にはなれない。
「あぁ。お前達、他の言術を見た事ないのか？」
「う、うん。じいちゃんのしか見た事ないよ。」
リーグはまだ怯え、何も言う事ができない。
「そうか、じゃ、かなり遠くから来たんだな。この街の者なら、絶対にいくつかの言術を見ているはずだからな。で、なぜ、こんな所にいるんじゃ？」
僕はここまでの事情を説明した。よく考えたら、こんな気味の悪い、本当に言術かどうかもわからないやつに、事情を説明するなんてどうかしている。でも、その時の僕たちは藁にもすがりたい状況だった。
すると、どうだろう。ゆっくり、ゆっくりと、僕たちを乗せた球が地面に引っ張られていく。