猫とうさぎとアリスと女王
 僕が何も言わずにぼんやりとしていれば、タケは僕を後ろから抱きしめた。


「タケ!放して!!!」

「なんで?寒いんだろ?」

「寒いけど・・・僕、男だよ!?」

「俺も男だ。」

「男にこんなことするの、おかしいよ。気持ち悪く無いの?」


僕は絞り出すようにそう言った。
本当はそんなこと言いたくなかった。

だってそれで“ああ、気持ち悪いな”って言われたらそれでお仕舞いだ。


「飛絽彦なら、平気。気持ち悪くなんか無いよ。」


僕は自分の耳を疑った。


今、タケは何て言った?


「飛絽彦、言えよ。」


タケはそう言って僕を正面に向かせた。

何を言うのかわからない。何を言えばいいのか。
けれど僕の口はそれを知っているかのように、言葉を発した。



「好き・・・。タケ、愛してる。」



そう言ってタケは僕の頬に触れて微笑んだ。


「知ってる。」


そう言われた瞬間に涙が溢れた。

タケはそれを見てまた笑った。


「お前、よく泣くのな。」


全部、全部タケのせいだよ。

知ってるならもっと早く言ってくれたらよかったのに。


タケの馬鹿。



「飛絽彦、俺にどうして欲しい?言って?」


タケが僕の頬を撫でた。





「キスして・・・。今度は人工呼吸じゃなくて、ちゃんとしたの。」



僕が上目遣いでそう言えば、タケはゆっくりと目を閉じて僕にキスをした。

唇と唇が触れるだけのキス。
凄く心地いい。



「飛絽彦、愛してる。」


タケは僕の耳元でそう囁いた。
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