猫とうさぎとアリスと女王
 一度タケの家まで行ってシャワーを浴びた。
なんだか信じられなかった。今、こうやって幸福の中にいること。

シャワーに打たれながらぼんやりとそんなことを考えては、タケのキスを思い出して笑みをこぼした。


タケは仕事の準備をして僕の家へと行き、僕は制服に着替える。
そうして学校まで送っていってくれた。

時刻は十時を回ったところだった。

確実に遅刻。

けれどそんなことどうでもよかった。


学校に着くと、タケはいつもの場所に車を止めた。


「じゃあ、行ってくるね。ありがとう。」


そう言うとタケは僕を抱き寄せた。

あったかい・・・。


「時間あったら、迎えに来る。」

「うん。」


タケは名残惜しそうに僕の体を放して行ってしまった。

車を見送りながら胸が痛んだ。
片思いも苦しいけれど、両思いも苦しいってことに気付いた。

愛しくて仕方が無い。


もっと一緒にいたい。

もっと触れていたい。



僕はその思いを振り切って図書室へと向かった。

授業は午後から出よう。



それまであの場所で、この幸福を噛み締めよう。
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