猫とうさぎとアリスと女王
 図書室のベランダにはすでにサボがいて、煙草をふかしていた。


「よう。岳志とはうまくいったみたいだな。」


開口一番、サボは僕にそう言った。


「なんでわかったの?」

「ここからよく見えたぜ。熱烈な抱擁シーン。」


とたんに僕の顔は真っ赤になった。

車の中でのやり取りを、サボに見られてた・・・。


「よかったじゃん。おめでと。」


サボはそう言って微笑んだ。

いつものニヤニヤ笑いとは違う、素の子どもみたいな無邪気な笑顔。
サボってこんな顔するんだ。


「有難う。」


僕は素直に礼を言った。

僕が今笑っていられるのは、サボのお陰でもあるから。
有難う、サボ。




 それから僕とタケは幾度と無く抱き締め合った。
互いに唇を重ね、体温を共有し、愛を囁きあった。

愛し合っているが故に、体を重ねた。

その度に僕は今生きていることの幸福を噛み締めた。


タケはいつも僕のことを想っていてくれて、時間があれば家に来た。
僕も何度もタケの家に遊びに行った。

休日には遠くまでドライブをしたり、デートをしたりした。




「ずっと一緒にいような。」

「死ぬ時はお前も道連れだから。」

「愛してる。」



異常な程の愛情が、僕は嬉しかった。


束縛が愛おしかった。







そんな幸せの絶頂の中だった。













タケが僕の前から姿を消したのは。
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