猫とうさぎとアリスと女王
 「真琴、大事な話があるんだ。」


お父様は私を部屋に呼び、突然そんなことを言い出しました。

いつもと違う重々しい雰囲気。
私を囲む舎弟の皆様。

そして、背筋を伸ばして前を見据えるお母様。



「組を、解散する。」



その言葉に私は大いに驚きました。
お父様がこの鳳組を解散させるなど、有り得ないことだと思っていたからです。

もし組を解散させるならばかなりの人間が路頭に迷うでしょうし、簡単なことでは済まされないのは目に見えています。


「どういうことですか?」


私は少々苛立ちながらも言いました。


「組は解散させる。今後は事業に専念しようと思ってな。
あいつらは全員、俺が作る事業で働かせるから安心しろ。

お前にも李乃にも迷惑かけるかもしれねえが、もう決めたことだ。
今日限りで鳳組は解散だ。」



男に二言は無いという言葉通り、私はお父様に反対の意を述べることはできませんでした。

いくら娘と言えど極道は縦の社会。
私が反論したとしても、それは聞き入れられることは無いのです。



ということで私は極道の娘から、鳳グループの社長令嬢となったのです。


けれど過去がそう簡単に切り離せる訳もありませんでした。
無論そのお陰で大きな会社にまで発展したのですが。



お父様は私とお母様に別の場所に住むよう提案をしました。

組を解散した今、何時何処から狙われるかもわからない。
それに私たちを巻き込みたくないのだと、お父様は言いました。



そうしてお母様は北海道へ、私は校外の一軒家へと転居を命じられたのです。
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