こころの展覧会
浴室にはいると、湯船は用意されていたのか、冷えた身体をあたためるのに最適な温度だった。
血が身体中をめぐっていくのと同じくして、思考がようやく戻ってきた。
何故、ついてきてしまったのだろうか。
言われるがままに湯船につかっている自分に問う。
知らない町。
知らない人。
知らない家。
普段の自分なら、こんな事は有り得なかった。
いつもの自分なら、知らない人に話しかけられても無視をするし、ましてはついていくことなどはしない。
あの時ーーー自分はふつうではなかった。
そして、橋の上で女性が言ったことを思い返した。
―――要らないなら、……私が貰ってもいいか?
言葉が、頭の中で繰り返し響く。
その響きは、嫌なものだとは感じない。
毎日繰り返されるざわめきたちを消してくれる、不思議な響き。
ただスーッと消えていき、心地よさが身体の芯に残る。