満たされしモノ
一応補足しておくと、Aクラスの位置が初めから最奥だったわけではない。


八階建ての巨大な校舎には四つのエレベーターと三つの階段が設けられている……、いや、設けられていた。


三つある階段の内、Aクラスの真横にあった階段が……


今現在、崩落しているのだ……


「ふん。未だに修繕が手付かずとはな。突貫なら俺に任せておけばよいものを」


「そんなことしたら僕達の教室まで崩れるよ……。少しは自重してよ、穴夫」


「だが断る」


即拒否されてしまった。穴夫はご立腹のようだ。


けれど、彼の怒りは尤もだ。


何故なら、階段の崩落は自然に起きたものではないから……


階段が使えなくなる程度に崩落した綺麗な破壊跡……


 


階段は人為的に壊されたのだ。
Aクラスに仇なす存在によって。


 


「ふぅ……、もう半年も経つのか……」


僕は溜め息が出る程度に諦めがついているが、そうでない生徒は数多くいる。


何せ、半年前に階段が崩落してから、Aクラスの昼食獲得率が減り続けているのだから。


「結局、犯人って誰だったんだろう?」


「Aクラスは曲者揃いだからな。警戒する奴は五万といるさ。


しかし……醜い穴だ」


穴に醜いもくそもないだろ、と思ったのは黙っておこう……


 
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