満たされしモノ
階下まで見える大きな穴とその手前を黄色いテープで封印された崩落現場。


僕と穴夫は階段跡を名残惜しげに一瞥して、教室へと入る。


まさにその時、予鈴のチャイムが鳴り響いた。


危なかった……、もう少しで遅刻になるところだった。


「先生は……まだ来ていないみたいだね」


「だから言っただろう。あの教師なら大丈夫だと。さあ、尻を差し出してもらおうか」


いつの間にか、先生のいるいないに僕のお尻が掛けられていた!!


穴夫の目が本気過ぎて怖い!!


「じょ、冗談言ってないで早く座ろうよ」


軽く流して歩く僕の背後をピッタリと付いて来る穴夫。


しまった!! 穴夫の席は僕の真後ろの最後列!!


だとすれば、授業中常に背後を取られた状態ではないか!!


うう……僕の貞操の危機かも……


ちなみに、僕の席は窓側の最後列から二番目。座席としてはなかなか良いところだ。


穴夫が後ろを陣取っていなければ、だが。


加えて……


右隣りの席は不知火だったりする。


「…………」


僕が席に着いてもつっけんどんな彼女だった……


 
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