満たされしモノ
パペット先生は重力に逆らっているせいか、やたら顔色が悪い。


確か今年で二十五歳らしいが、とてもとても……


男性教師の中では年少の部類に入るが、女子生徒からの人気が少なく、これまた泣ける。


それでも僕達の誇るべき担任なのだ。


「不知火さん、いかなる理由でも……乱暴はよくないですよ……」


「あ……はい、すみませんでシた……」


「本間君、覗きはよくないよ……犯罪になりますからね……」


「あ……はい、肝に銘じておきます……」


先生のやんわりとした注意に僕と不知火は素直に謝る。


パペット先生の言葉には不思議と人を納得させる力がある。


まあ、死に際の人間の遺言には従おう、という心境に似ているのだろう……


加えて、パペット先生はいつも生徒のことを見守ってくれている気がするのだ。


まあ、いつもぶら下がって上から眺めているから、そう見えるだけかもしれないが……


……


「それでは皆さん……HR(ホームルーム)を始めます……、委員長……」


パペット先生の指示により委員長が号令をする。


しかし、異様な光景だ……


パペット先生の吊り位置が教室の後ろ側なため、全員が黒板とは逆に礼をしている……


 
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