満たされしモノ
年々、生徒数が増加する黎明学園において、昼食の不足は最大の問題である。


そこで、対応策の一つとして店舗の新設がある。


大体はどこぞの業者に依頼し、訪問販売という形になるが『びっくりヤキヤキヤ』はどうなるのだろうか?


焼きたてを提供するつもりならば仮設の屋台を学園内に作るのか……


はたまた、屋台タイプの車が来るのか……


(ソースの香ばしい匂いが……、うぅ、涎が出てくる!!)


わりと頻繁にある店舗の増加だが、毎回楽しい気持ちになる。


いや、本当に待ち遠しい!!


「お店が開く頃には……皆さんは……もう二年生……」


クラス中が明るい雰囲気に包まれているなか、何故かシンミリとしているパペット先生の声。


「お別れは……悲しいものです……」


先生の発言に僕は咄嗟に顔をあげる。


「先生!! もしかしていなくなるんですか!?」


教師が別の学校に赴任するなどは珍しいことでも何でもない。


ただ、その対象がパペット先生だなどとは想像もしたことがなかった。


僕の言葉、そして不安が教室内に伝播していく。


クラスメイト達も不安の入り交じった疑問を先生にぶつけ始めた。


つい先ほどまでプリントに夢中だった連中が……


やはり皆、パペット先生のことが好きなのだ……『教師』として。


 
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