満たされしモノ
食堂へ向かう不知火は、いつもエレベーターを利用している。
外へ出る僕と穴夫は階段を使用。
なので、教室を出るとすぐに不知火とはお別れだ。
彼女はいまだ納得してなさそうだが、ここまできたらどうしようもない。
「じゃあ」と一言だけ告げて強引に別れた。
そして現在、僕は階段の踊り場で穴夫と向かい合っていた。
どう説得しようかと考え始めた途端、
「刀矢、『パンタゴン』に行くのだろ?」
前置きなしに核心をついてくる穴夫。
思わず笑みが零れる。
穴夫が相手だと話が早くて助かる。
「うん。不知火には悪いけど……」
「気にするな。刀矢のやりたいようにすればいい」
「……
本当、ありがとう……」
穴夫は僕の行動を制限しない。けれど、いつも気にかけてくれる。
改めて、親友の有り難さに気付かされた。
「それから……悪いけど、食事も別々にしよう」
「そうだな。刀矢がマズパンを持ってきたら不知火が発狂しそうだ」
不知火の怒りの形相がありありと浮かんでくる。僕は思わず身震いした。
それと、僕がマズパンを持ってくる、つまり敗北することが前提になっているのが少し悲しかった。
外へ出る僕と穴夫は階段を使用。
なので、教室を出るとすぐに不知火とはお別れだ。
彼女はいまだ納得してなさそうだが、ここまできたらどうしようもない。
「じゃあ」と一言だけ告げて強引に別れた。
そして現在、僕は階段の踊り場で穴夫と向かい合っていた。
どう説得しようかと考え始めた途端、
「刀矢、『パンタゴン』に行くのだろ?」
前置きなしに核心をついてくる穴夫。
思わず笑みが零れる。
穴夫が相手だと話が早くて助かる。
「うん。不知火には悪いけど……」
「気にするな。刀矢のやりたいようにすればいい」
「……
本当、ありがとう……」
穴夫は僕の行動を制限しない。けれど、いつも気にかけてくれる。
改めて、親友の有り難さに気付かされた。
「それから……悪いけど、食事も別々にしよう」
「そうだな。刀矢がマズパンを持ってきたら不知火が発狂しそうだ」
不知火の怒りの形相がありありと浮かんでくる。僕は思わず身震いした。
それと、僕がマズパンを持ってくる、つまり敗北することが前提になっているのが少し悲しかった。