満たされしモノ
そろそろ昼休み開始から五分が経過しようとしている。


いくら多少の時間的余裕があるとは言え、これ以上の遅れは危ない。


「穴夫!! 僕はもう行くから!! 不知火は任せたよ!!」


彼にこれ以上の説明は不要と思い、僕は喋りながら駆け出した。


穴夫とすれ違いざまにハイタッチを交わし、階段を駆け降りる。


……まあ、外に出るまでは一緒なのだから、当然のように穴夫が追い掛けてきたけどね……


 


……


そして僕は晴天の広がる外へと飛び出した。


ここからは一人。僕個人の戦い。


生徒玄関を出て少し視線を横に向けると、人の群がりが存在していた。


そこがパンタゴン、僕の戦場だ。


『パンタゴン』とデカデカと書かれたのぼりを手に堂々と立つおばちゃん。


そして……


おばちゃんの前に設置されたパイプ机とその上に乗っているケース……


パンだ!!!!


腹の底から空腹感が這い上がってきて、僕のお腹が盛大に鳴る。


口の中は唾でいっぱいだった。


パン……パン……パン……ウマパン!!


喉から手が出るほど食べたかった『ウマパン』が今、目の前に並べられている!!


だが、まだ手が届かない!!


理由は明白!!


パンタゴンの前で繰り広げられている乱闘を突破しないことには!!


 
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