満たされしモノ
僕が疑いを持っていると悟った閂は呆れたように首を振った。


「まさか私が素直に施しを受け『ノーマル弁当』を食べている、と思っているのか?」


『ノーマル弁当』……、なんて捻りのない名前だ。


「あれはな……、ほんとーーにつまらん弁当だ。食べ続ける先に待っているのは死のみだ」


死、は大袈裟ではないか。いや……そうでもないか。


マグロが海で泳ぎ続けるのと同様で、閂は刺激を求め続けている。


刺激を取り上げること、すなわち無味乾燥な食事を続けるのは死に繋がるということだ。


じゃあ一体何を食べているんだ? と口からでかかった時、


「今日の私の戦場は『タンドリーチッキン』


当然、勝者はこの私」


胸に当て、ドヤ顔で僕を見つめてくる。


彼女の顔はとても憎らしい、……が!!


憎らしさを上回る驚きがあった!!


「タンドリーチッキンだって!! いつもフライドチキンの香ばしい匂いを漂わせている『あの』!?」


「そう。『その』タンドリーチッキンだ。ただし、私の獲得物はフライドチキンではない」


「そ、それは……」


ゴクリ――
唾を飲み込む音が嫌に大きく聞こえた。


「それはな……


 


豚足だ」


 
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