満たされしモノ
箱一杯にあったフライドレッグだが、十分もしない内に僕と閂とで食べ尽くしてしまった。


しかも、僕の方が圧倒的に多く食べている。


完食したあとになって、申し訳なさが込み上げてきた。


「か、閂……ごめん。つい、美味し過ぎて……」


しかし、彼女はさほど気にしている風でもなく、


「なに、気にするな。食べて良いと言ったのは私の方だからな。


それにしても、このパンは……」


閂の手には一口だけ食べられたパンが握られている。


僕の食糧だったパンの内、踏まれなかった方。


その名も『ベガルタ21』


形は球状で、表面が綺麗な小麦色をしているハードパンだ。


フランスパンの親戚みたいで、見た目は旨そう。なのだが。


その実、ベガルタ21は強烈な特徴を持っている。


それが『硬さ』だ。


鋼よりも強く。

像が踏んでも壊れず。

何物をも跳ね返す。


そんな、パンに求めんなよ、的なコンセプトをもとに作られたのが『ベガルタ21』なのだ。


ちなみに味はない。


コチジャンソースに浸して、ふやけた所をようやく食べられた閂だったが……


ただ食べにくいだけのパンに満足するはずがなかった。


「これが噂の『マズパン』か……。想像以上の酷さだな」


「おっしゃる通りです……」


投げ返されたパンを受け取り、溜め息を吐く僕だった。


 
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