満たされしモノ
食事が終わっても、昼休みは二十分近く残っていた。


あまり早く教室に戻っても時間が勿体ないということで、僕達は雑談することにした。


しかも、大変ありがたいことに閂がお茶を淹れてくれるという。


「すまないな。来ると分かっていれば美味しいお茶を用意していたのに。


今日はノーマル茶で我慢してくれ」


「それは全く構わないけど……、備品のお茶もやっぱりノーマルなんだね」


ノーマルに突っ込む僕だったが、内心はホッとしていた。


黎明学園には自動販売機が設置されているが、そこでも争奪戦は存在する。


美味しい飲み物は休み時間毎に数本しか入っておらず、他は汚水と差がない商品ばかり。


そのため、休み時間になると喉を潤そうとする者同士で死闘が繰り広げられる。


その上、自動販売機で争う生徒は余力のあるハイレベルな人間が多いので、難易度も並大抵ではない。


だから、わざわざ美味しいお茶を用意してもらうと、とても恐縮してしまう。


閂に言ったら怒られそうなので、口には出さないが。


それに、ノーマル茶でも十分に美味しい。油でギトギトな口内を洗い流してくれる感じだ。


「とっても美味しいよ。ありがとう、閂」


「ふふ、どう致しまして」


閂もお茶を啜り一息ついた後、


「それじゃあ刀矢、そろそろ今日の争奪戦のことを聞かせもらおうか」


話は本題に入る。


 
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