満たされしモノ
「『マズパン』を手にしていたということは、行ったのだろう。


パンタゴンへ」


単刀直入な質問。


閂に怒っている様子は見られないが、やはり口ごもってしまう。


場所が場所だけに僕の立場はかなり弱い。


しかも、革張りのソファーに対面に座っているのだ。


深く腰掛けて足を組んでいる閂と、萎縮し切っている僕とでは、上司に説教を受ける部下の図にしかならないだろう。


「いや、その、忠告してくれたのにパンタゴンに行ったのは申し訳ないと……」


「勘違いするなよ、刀矢。私は別に責めてなどいない」


伏せていた顔を上げる。


閂の表情を見る限り嘘は吐いていない。


「むしろ、マッドドッグのことを聞いてなお、行ったことに感心するくらいだ。


でだ、聞きたいたのは奴の様子。居たのだろう?」


うーむ……。もしかして僕は偵察に使われたのだろうか。


それらの真偽は表情だけでは読み取れなかった。


だが、怒られないことに安堵した僕の心は、若干軽くなる。


僕は語った。


昼休みが始まってからの出来事を。
戦闘の途中、戌亥先輩が現れたことを。
ナイフの幻想に怯えたことを。


僕が情けなくも、あっさりと敗北したことを。


 
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