遠目の子鬼
演奏会

1) 緊張の合間に

柔らかな又兵衛の視線が、ちょっと心を擽った。


なんだかとっても苦しく感じた。


「保孝…」


又兵衛がそう呟いた時に、僕は、はっと気が付いた。


又兵衛と過ごせる時間が、もう、数える事が出来る位、短くなってしまった事に。


「演奏会まであと一週間だな。俺達が、こうして会えるのも、もう少しだ。全力で頑張ろう。なに、英二達は演奏会が終わった辺りで、重要な事を告白しあう筈だ。俺の勘だが時は満ちている。大丈夫だ、心配する事は無い。そしてそれは上手く行く。ひょっとしたら、一生を決めてしまう告白に成るかも知れない。凄い事じゃないか」
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