遠目の子鬼
「保孝…」


英二の声だった。


僕は、その声で、はっと我に返る。


ここ最近何時もこんな感じだ。


又兵衛に練習を付けて貰うと、時間が過ぎ去るのを忘れてしまう。


「――なに、英二、もうおしまいの時間?」


「ああ、そうだ。早く片付けて帰るぞ」


僕は少し後ろ髪を引かれる気分を抑えながらユーフォニュームをケースにしまい英二の後をついて音楽室に向かった。


「なぁ、保孝…」


「え、なあに?」


「――いや、別に何でも無いんだけど、おまえ、最近、随分練習熱心だよな」


「そ、そお?」
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