遠目の子鬼
僕は、再び又兵衛を見詰めた。


「おいおい、分かったのかよ?」


又兵衛は僕に向かって肩をすくめて見せた。


「――え、う、うん」


「よし、それじゃぁ決まりだ。うんと練習するんだ。なあに、じき、上手くなるさ。そうしたら、彼女も、きっと保孝を気にする様に成る」


「そう、そうだね。わかったよ又兵衛。僕、一生懸命練習するね」


僕は又兵衛の励ましを受けて楽器を構えると一生懸命息を吹き込んだ。


唇の振動が楽器に伝わって教室中に響く。


同時に自分の周りは爽やかな草原と化して動物達が僕の周りに近寄って来た。


ユーフォニュームの音が晴れ渡った空にのびやかに響く。


又兵衛は僕の演奏を聴きながら、じっと何かを考えて居る様だった。
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