遠目の子鬼

3) 運命と言う奴

「保孝、残念だが、この世界に人間は住めないんだ」


又兵衛の表情から帰ってくる答えが予想できたので僕はその答えを聞いてもあまり落胆する事は無かった。


「――そう、やっぱり…」

「ああ、そうだ。何て言ったら良いのかな…この世界は、保孝が思って居る程、隅安い世界じゃぁ無いんだ。この世界は、生まれてから死んで行く迄の運命が、はっきりと、生まれた瞬間に決まるんだ」


僕は又兵衛が少し悲しそうな表情で話すのが少し気に成った。


「運命が?決まっちゃってる?」


「ああ、そうだ。俺達みたいに土と運命を共にする者も居れば、小難しい法律と格闘する運命の奴もいる。それが全て、生まれた瞬間に決まるんだ。これには逆らう事が出来ない…絶対的な事なんだよ」
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