遠目の子鬼
又兵衛は上着で一回手を拭うと差し出されたなっちゃんの右手を握ってにっこりと笑った。


「――あ、あの、なっちゃ…いや、佐藤さん、あの、この事は…」


別に悪い事をしている訳では無いのに、僕は酷く、おどおどした態度でなっちゃんに話しかけた。


なっちゃんは…


「分かってる。分かってるって、秘密にしなけりゃイケないんでしょ?こういう時はお約束よね」


なっちゃんは、くすくす笑いを必死で抑えながら元気に僕にそう答えた。


「え、う、うん、そう、そうしてくれるとありがたいんだけど…」


僕の話を聞いて又兵衛が「いや、別に秘密にする理由なんて無いだろう。別にやましい事をしている訳じゃなし。
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