LAST-LIFE
「項宥様が倒れられた。」
「あ…兄上が!?」
「次の帝を誰にするかという論議がわいている。」
「総鶴以外にいるのか?」

精一杯表情を冷静にして聞いた。
四郎は一呼吸おいてから口を開いた。

「お前だ、勘蔵。」

背中を冷たい汗が伝う。

「何を言うかと思えば・・・。私は出家した身だ。」
「それはそうだ。・・・しかし、実際にお前をたてようという動きもある。」
「私は家には戻らん。」
「そうか。・・・ならばお前を討たなくてもよいわけだな。」

四郎の目は鋭い眼光を放つ。
本気に違いない。
鳥肌が立つのを感じた。

四郎は続ける。

「俺は総鶴様を立てる。でなければ道理に合わんしな。」
「・・・今日はそれを伝えに?」
「忠告をしに・・・と、言ったところか。」
「忠告?」
「お前がもし、実権を握ろうという動きをすれば容赦なく斬る。変な動きをするなよ。」

言い終わると四郎は静かに立ち上がる。

四郎は藩内随一と言われる剣士である。
その太刀を受ければひとたまりもないだろう。
心臓が強く脈打っていた。
< 46 / 69 >

この作品をシェア

pagetop