聖花学園~花よ咲き誇れ~
「もういい。もういいから……」

 流依が、わたしに言い聞かせるように呟いて、抱きしめる腕の力を強めた。

 伝わってきた流依の体温が暖かくて、わたしは安心する。
 そして恥も外聞も気にせず、わたしは流依にしがみついて泣いてしまった。






 しばらくして、落ち着いたわたしはどうしようか迷っていた。

 もういいよ、と言えば済むことなのに言えない。

 恥ずかしいからというのもあったけれど、それよりも流依が離してくれそうになかった。

 流依は何も言葉を発していなかったけれど、わたしを抱きしめる腕は力強くて、もう離さないとでも言っているかのようだった。

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