無色の日の残像
 カウンターで電話が鳴った。
「失礼」と言って雨鳥が受話器を取る。

「──はい、私が成木です──はい」

 遠くの空が光った。
 ごろろ、と低い音がして、無色はびくりと肩を震わせる。

「はい──はい──」

 雨鳥の電話は続いている。
 所在がなくて、無色は窓の外を眺めた。

 灰色の海で波がうねっている。
 窓を流れ落ちる雫が、透明な無数の硝子の粒のようだった。

「──はい──はい、ではもう少し考えさせて下さい」

 そう言って、雨鳥は電話を切った。

「ごめんね、何の話だっけ──ええと、今日はどうしてこの島に?」

「お墓参りに来たんですけど──急に降られちゃって」

「ああ、透明ちゃんの」

「はい、それと」

 無色はぎゅっと、膝の上でスカートを握った。

「空気と羽海の」
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