無色の日の残像
 おじさんは笑った。
「見ればわかるさ。あのセスナ──ピースピースとか言ったっけな──ありゃあ、この国で作られた機体じゃない。海外からの民間機の輸入なんて、『こっち側』じゃあ禁止されてるからな」

 空気は驚いた。
 ピースピース号が、他の国で作られたものだったなんて全く知らなかった。

「この『輝神』は東でも特別なんだ」と、おじさんは黒い戦闘機を見上げた。

「キシン?」

「そう、輝く神って書いて『輝神』」

 空気は、目の前の機体の真っ黒な外観を眺めて少し変な気がした。
 どう見ても「輝く神」というイメージからは程遠い。

 そんな疑問が顔に出ていたのか、おじさんが頷いて言った。
「『輝神』って名前の由来はほれ、あんたたちの飛行機のプロペラを焼き切ったレーザー兵器だよ」

「えっ」

 空気はまたもびっくりした。
 無色はやはりそんな話などしていなかったはずなのに。
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