無色の日の残像
 やがて近くまで来て、彼らに気がついた少女がこちらを見た。
「無色!」と、少女は嬉しそうな声で少年の名を呼んだ。

「良かった。今日はもう来てくれないのかと思っちゃった」
「ごめん。色々あって遅くなったの」

 少女はそれから、立ち尽くしている空気と羽海に気がついて「あら?」と首を傾げた。

「こいつらのせいでね」
 無色が二人を顎でしゃくった。

 二人は目の前の少女を、茫然と見つめていた。

 夢のように綺麗な少女だった。
 彼らと同じくらいの年齢だろう。

 大きな瞳を縁取る長い睫毛。
 透けるような白い肌のせいか、整った唇の赤さがルージュを塗ったように艶めかしい。

 華奢な肩に羽織った薄いピンクのカーディガンが、とてもよく似合っていた。

 そして、風に揺れている真っ白な髪の毛。

 遠目に見た時は、夕日の光の具合かと思った長い毛髪は、雪のように真っ白だった。
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