無色の日の残像
「本当にクローンなの?」
 羽海が尋ねた。

 遺伝情報が全く同じにしては、二人の造形は少し違う気がするし──。

 何より。

「クローン人間なんて、そんなの──」
「作れるよ」

 あっさりと、無色が言った。

「ふうん、西側にはいないんだ」
「いないよ!」

 食い入るように無色と透明を見つめたまま羽海は首を振った。
 人間のクローンなんて、実際に見るのは初めてだった。

「そうなんだ。でも、『こっち』では作れるんだよ。技術的な意味でも、法律的な意味でもね。死亡した子供のクローンを作ることが、法律で認められてるから」

 驚いている羽海と空気に無色はそう言って、「条件はあるけど」とつけ加えた。

「凄い」
 実物を前にして、空気がごくりと喉を鳴らした。

 本当に「こっち側」は、自分たちが暮らしていた西側とは別世界だと思った。

「凄くないよ、別に」
 無色は面白く無さそうにそう言った。
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