無色の日の残像
「でも、死んだ子供のクローンって──どうして無色と透明は二人なの? どっちかが、どっちかのクローン──っていうのとも違うってことだよね」
「それに、苗字が違うのは何でだ?」

 羽海と空気が首を捻っていると、「苗字が違うのはね」と透明が教えてくれた。

「わたしたちを産んだ人が違うからなの。会ったことはないけど、わたしたちには一応、わたしたちを出産した人と同じ苗字がつけられてるんだって」

 違和感のある説明だった。
 母親ではなく、わたしたちを産んだ人、という言い方。
 それに──会ったことがない?

 聞き返してもよいものか、空気と羽海が考えあぐねていると、無色が口を開いた。

「代理母出産だよ。父と母──になる予定だった人たちが高齢だったから」
「なる予定だった?」
 さすがに空気が聞きとがめて言った。

「そう、代理母が僕らを身籠もってる間に、二人とも死んだんだってさ」
「事故か何か?」

「違うよ。死んだんだよ」
 無色は淡々とそう繰り返した。

 空気と羽海は意味がわからずに顔を見合わせて、それから無色が「亡くなった」ではなく「死んだ」と言った、その言葉の意味に思い当たった。

「自殺したってことだよ」

 無色がやっぱり淡々と、二人の考えを肯定した。
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