無色の日の残像
 病院から引き返す途中で、コスモス畑の前を通りかかった時、無色が足を止めた。

 透明への花を摘んだ、コスモス畑だ。

「こんな所に花なんて、咲いてたんだな」

 無色は不思議そうに呟いた。

「何度も通ってる道なのに、今日二人が教えてくれるまで僕、全然知らなかったな」

 何の感慨も込められていない言葉を聞きながら、空気はふと、帰り際に透明が言っていたことを思い出した。

 透明を病室に連れていって、持ってきたコスモスを花瓶に生け、別れを告げて部屋を去ろうとしたときだった。

「お花、ありがとう」

 透明がそっと、空気と羽海に囁いた。

「二人が、無色に持ってくるように言ってくれたんでしょう?」
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