無色の日の残像
「答えは?」
 雨鳥が聞いてくる。
「わかったの?」

「僕が、しているのは──」

 自分が【カグヤ】に乗ってしてきたことは。

「敵機を、破壊すること、です」
「破壊してどうするの?」
「それは、敵の数を減らして──」
「数じゃないよ?」

 雨鳥は珍しく語調を強くした。
「数字じゃないだろう、無色くん」

 無色は怯んだ。

 雨鳥は、空気や羽海に接する時と無色に対する時とで明らかに態度が違っている。
 無色には気安くて優しいマスターではなくて、容赦のない言葉を浴びせてくる。

「キミには『敵』の『数』しか見えていないのか?」

 だが何に対して──容赦ないのか。
 雨鳥が何を言おうとしているのか。

 それが、無色にはわからない。

「キミには、夜光虫の光が見えたんじゃないのか?」
「僕は──」
「キミは。たった今、拳銃を構えて、俺をどうしようとしたんだ?」

 わからない?
 わからないはずが、ない。

「──殺そうとしました」

 わかっていたはずだ。

「キミは何をしているんだ?」
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