無色の日の残像
「僕は──人を殺しています」

 雨鳥は無色の顔をじっと見つめて、大きく嘆息した。

 それから、「悪かったね」と謝った。

 困ったような笑いを見せて、雨鳥は無色に繰り返した。

「キミはやっぱり、自分が何をしているのか、わかっていないというわけだね」

 去って行くマスターの後ろ姿を、闇の中に立ったまま、無色はいつまでも眺めていた。
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