無色の日の残像
「むっ結ばれたいって──」

 変な子だとは思っていたけれど、やはり無色は普通の女の子とは違うようだ。
 ほっぺたを赤くしながら、羽海は再認識した。

 と言うか、無色がどうして急にこんな質問をしてきたのかが羽海には完全に理解不能だ。

「ええとね、普通は、好きかとかつき合いたいかとか、そういう聞き方をするものなんじゃないかな?」

 ふうん? と、無色は灰白色の髪の毛の隙間から上目遣いに羽海を見た。
「羽海は空気が好きなんだよね?」

 この断定的な聞き方も少し普通ではない気がするが、ともかく羽海は頷いた。

「うん好きだよ。でもまあ、好きにもいろいろあるからね」
「色々? 好きだったら結ばれたいと思うものなんじゃないの?」
「うーんと」

 うなる羽海に、カウンターの向こうから雨鳥が「頑張れ、負けるな」と声援を送ってきた。

 頑張ろう。

 羽海は気を取り直して、無色に向き直った。

「無色は、透明が好き?」
「うん」

 無色は素直にこくりと首を縦に振った。
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