無色の日の残像
「彼女は何の病気?」
 砂浜を歩く二人を眺めながら、雨鳥が無色に尋ねた。

「彼女だけじゃないよね」
 雨鳥の顔からはいつもの軽薄な笑いが消えていて、静かな──それでいて何かに怒っているような──そんな表情をしている。

「キミも、だね無色」

 雨鳥は無色のほうを見ていなかったが、きっぱりした口調で断じた。

「明らかに筋肉量が足りない痩せた細い体つきで、色素も薄い。同じような症状だ」

「テロメアの──病気です」
 無色は慎重に言葉を選びながら、言った。

「遺伝的に、テロメアの長さが短いんです」

 そうか、と言って雨鳥は何かを──真っ青な海を睨みつけるようにした。

 無色は、透明を背負った空気をじっと見つめた。

「ありがとう、空気」
 震える声でそっと、離れた場所にいる少年の背中に声をかけた。
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