Magician Song〜魔術師の唄〜
急に力強く手首を掴まれた。
その強さに目を丸くしていると、父がリアをぐいと引っ張りながら走り出す。
「なにっ…父さん!?」
「しっ!静かに…!」
焦っているかのような父の声音に、リアは口を閉ざす。
どうしたのだろうか。
この焦りようは、ただ事ではない気がする。
何かが起こっているのは確かなのだろう。
だが、その何かは今のリアには定かではない。
黙って父についていくと、一つの部屋に入った。
バタン!と乱暴に扉を閉め、慌ただしく鍵をかけている父に、もう何がなんだかわからない。
「……父さん?…何が、起こってるの…?」
「………」
不安げにリアが問うが、応えはない。
リアがごくりと息を呑むと、いつの間に持って来ていたのか、リアの愛用のダガー2振りを父が差し出して来た。
首を傾げながら受け取ると、今度は小さい巾着を渡された。
「…これ、なに?」
「金だ、金。…持っていけ」
「…え?」
どこに?
そう問おうとするリアだが。
パリーンッ!
「…っ…!?」
「…っくそ、もう来やがったか…!!」
大きな、ガラスが割れるような音に、リアはびくっと肩を震わせた。
ちっ!と忌ま忌ましげに舌打ちをした父は、その部屋の壁に立て掛けられている大剣を手に取る。
そして、身を固くしているリアに、自分の首にかかっていた青い石のペンダントを差し出した。