シンシア ( l )
好奇心旺盛な岡部美雪は、十一階で蝶の光に誘われて美術展に足を運んでいた。
外とは、別世界で暖かく、時計が無く、心が落ち着くベージュと薄緑が使われている部屋だった。

展内は、『モナリザ』や3D映像の宙に浮いた『自由の女神』やホログラフの『ラピュタ』『ネコバス』が浮遊していて芸術の枠を越えた世界だった。

『へー、たまには、いいものねっ、豪雨の時の雨宿りって。 私の為の貸し切り・・・ほほほほっ』
シルバーフレームの眼鏡にモデルのプロポーション、美人家庭教師タイプの子だった。

濃紺制服にスカートの美雪がある空間に目を止めた。
「あれっ、な〜に!?」
床の一部が光ったのだった。
気に成って、部屋の中央を確かめに歩み寄った。

床には、一平方センチメートル位のダイヤの絵が描かれていた。
興味深げに両膝を曲げ、右腕を伸ばし、人差し指の先で絵を触ってみた。
すると虹の光が小さく広がり、三平方センチの絵に変わった。

「うわーっ」 小さな声を出し、驚いて目を見開いた。 笑みを浮かべた。 少女に成っていた。
再度触れてみると、五センチのダイヤの絵に成り、ぼんやりと立体化し、フィルム状に。

『アラジンと魔法のランプ』のように舞い上がる。 踊る、ほほにキス、額にもキスをした。
美雪は、目をつむり陶酔した。 心を許したのだった。
フィルムは、一瞬にして黒光し、襲いかかった。
シューシューと音を立てて口や鼻、体、足に幾重にも巻き付き、締め付けた。

目がひっくり返った。
数秒で窒息死させた。
床からプレートが上がってきた。
タイトルは、『救いを求める人』
横たわって右腕を伸ばし、手を開いている体勢の美雪だった。
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