シンシア ( l )
前が見えない程の豪雨は、午後八時十五分を過ぎても止む気配を感じさせなかった。
中途半端な季節なので薄着気味の人は、身を縮めていた。

ニースリーデポンは、十二階建ての四つ建物から出来ていた。
中央にショッピングデパート、それに対して左右・後ろに立体駐車場が並んでいた。

その駐車場とデパートは、六階の三つの掛け橋と外壁の端・中央をつたうH型エレベーターで移動が出来るように成っていた。
またショッピングデパートは、吹き貫けも出来る仕組みで十二階は、下も見えるし、周りも一望でき、日本海最大のデザイン建築物として、ローカルニュースや全国ネットでも取り上げられていた。

健のパソコンが音もなく立ち上がる。
そしてパソコンの原型が無くなる程 悪魔が、黒い顔や手を四方八方にもがき伸ばした。
灯りのついたディスクトップに"これから実行する"と書かれ、"了解 任せた"とチャーミンから返事が来た。 メールが送信される。

暗い事務所に精密なニースリーデポンの模型が有った。
ピンポイントライトが当たる。

ペタペタペタッ。 悪魔が近付き、臭い色のついた息を吹きかける。
すると机上からブロック式(本物みたいな色付け)模型図が血塗られた、腐ったパラボラアンテナと共に上がってきた。

志向センターポールが、ニースリーの建物に成っていた。
ニースリーのHPが現れ、そしてパソコンに魔力が強制ダウンロードされた。
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