シンシア ( l )
社会現象を起こしていたG-DNAの"神のあやまち"が、社内の空気をつんざいていた。
「早く走れーっ、止まるなーっ、逃げろーっ」
二十歳の四人は、慌てふためいていた。

ビル街、ニュータウン、野原をひたすら走り続ける。
「何だったんだ。 あの光景は!?」
「狂ったように痛みが無いみたいに、抑制を外したみたいに大勢でナイフで刺しあってた!?」
「それに人間の溶けた姿干しの壁!?」
「止めろ、喋るなっ、忘れろっ・・・・・・」

四人共タバコを吸って各々の世界に・・・・・・。
煙が車内を舞う・・・・・・時間が経過する・・・・・・静かだった。
「んっ・・・!?」 ギューギュギュギュッ、ギュー。
「どうしたっ」
「タイヤが空回りしている」
四人が車内で目を合わす。

パタパタッ、パタパタッ。 赤と緑の腐った腕が八本伸び、タイヤに手がピタリと付いていた。
車のフロントが三十度傾き、血の池に沈み始める。「お〜っ、おいっ!?」
「おぉ〜・・・!?」
「わぁ〜・・・!?」
「げげっ!?」
車内は、パニック状態に成った。

血が腰迄入ってきた。
バンッ、バンッガッシャガシャガシャ〜。
運転手の梶尾が喉元を噛まれ、振り回された。
エアーバックが膨らむ、鳴りっぱなしのクラクション、そして残り三人も急襲された。

後部の燃料補給口が開く。
腐死人が蓋を開き、焚かれた発煙筒が叩き込まれた。
ドカーン、爆発、炎上。
トランクに座った腐死人が、タバコに火をつけ、最後に喋った。
「情報は、漏らしちゃ〜駄目よ。 タバコも吸い過ぎちゃ〜駄目よ。 フフフッ」
ウインクをしてタバコをふかし、血の池に燃えた車ごと沈んでいく。
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