お兄ちゃんの気持ち
おれと違って、ぐいぐい飲んでるコウスケは俺の手帳から取り上げた短大の入学式前に家で撮った写真を見ながらうっとりしていた。

「会ったこともないのに、忘れられないなんておかしいよな」

時々会う俺から聞くカナコの事は、そんなに沢山なかったんじゃないのか?
そんな疑問は、コウスケに笑い飛ばされて。

「お前、マジ?飲むと仕事の話かカナコちゃんの話しかしないくせに」

よく言うよなんて笑い飛ばされたら、返す言葉が見つからなかった。

そんなにカナコのことを?

どうも目の前にいる親友には、素直な気持ちが言えるようで。

仕事に行き詰まった時は、無理やり出張を作って会いに行ったこともあったっけ。

俺に取って、コウスケはなくてはならない存在だった。
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