あの男は私に嘘をつく
カランカラン





「いらっしゃ……、恭子ちゃんっ。」






「麗華姉さん……。」











店のドアを開けた途端、微笑みかけてくれた麗華姉さんに、思いきり抱き着いた。
麗華姉さんは、身長が高いから、私の頭はちょうどお腹の位置にあった。











麗華姉さんは、ただ何も言わず…、何も聞かずに
私の頭を撫でてくれた。
まだ香水をふっていないのか、麗華姉さんから太陽のにおいがして、なんだか落ち着いた。












小さく、ありがとう、と言って離れると、私はカウンターの椅子に座った。






麗華姉さんは、冷蔵庫から冷えた炭酸水を出し、コップに注いだ。なんだか今日は、カクテルが欲しい、と言う気にはなれなかったから、大人しく受け取り、コップのふちに口をつけた。







口のなかが冷たく、はじけて、とても切なくなったけど、必死で涙をこらえた。
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