あの男は私に嘘をつく
がちゃんっ













私は家を出て、走り出した。どこへ行くでもない。ただただ、あの家にはいたくない。それだけだったから…。













どんどん家から離れてく。












普段行ったことのないようなところまで行った。












でも、まだまだ走る。走る。












…頭から消えないんだ。













あの母の顔が……。













『私のこと嫌いなんでしょ??』












頭のなかの母に話し掛ける。
でも、あの目で見つめてくるだけで、返事はない。











「……答えてよっ!!!!」












息を切らし、精一杯の声で叫ぶ。私の横を通りすぎるサラリーマンゃ、カップルたちが振り返っているのがよく分かった。












でも、もうなんでもよかった。












もう十分傷ついているもの。












恋も、家族も、すべてが私にはない。私には私しかいない。












そう理解すればいいことなのに……、












こんなに心が苦しいのは…なぜ??












痛む胸を押さえ、その場にうずくまった。
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