Symphony V
レオンの姿がなくなったのを確認すると、唯はバスタオルを体に巻いて、ダッシュで自分の部屋へと戻った。適当に着替えをひったくると、隣の両親の寝室へと急いだ。
ばたん!と扉を閉じると、はぁ、と息を吐いて急いで着替える。

フリルつきのショートパンツにロングタンクトップ。
着替えた後で、自分が美術館に行くことを思い出す。


…ルーヴルの美術品達…ごめん。


まぁ、どうせ田舎だし、そんなに堅苦しい服を着なくてもいいか、と、自己完結をして、部屋に戻る。

「あ、お帰り」

レオンがにっこりと笑って出迎える。その笑顔に、少しだけ顔が引きつるが、平常心を装って、そのままドライヤーを手に取り、髪を乾かし始めた。

「ごめんね、後もうちょっとだけ待ってて」

慌てて乾かしているとレオンがドライヤーを奪っていく。

「なに?」

振り返ろうとすると、ガシっと頭をつかまれて動けなくなる。

「じっとしてて」

言われるままにおとなしくその場にじっとする。レオンが慣れた手つきで、唯の髪を乾かしていった。


「…レオンって、美容師さん?」

唯が聞くと、レオンは笑って答えた。

「ぶー。はずれ」

「でも、髪乾かす手つきがなんか…お店とかでやってもらってるみたい」

唯が感心したように言うと、レオンはふふっと笑って答えた。

「それは嬉しいね、ありがとう」

少しだけ優しいレオンの声に、唯はドキッとする。
いつも自分で乾かすより、半分くらいの時間で髪が乾いた。

「すごい…」

しっかりと外だけではなく、中も乾いていて、感心する。
< 35 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop