Symphony V
「せっかく可愛い格好をしてるんだ、セットもしてやるよ」

そう言うと、レオンは近くにおいてあったコームを手に取り、慣れた手つきで唯の髪を纏め上げていく。
何をどうしてそんな髪型になったのか、唯にはよくわからなかった。が、トップでまとめた髪を軽く散らし、少しだけサイドにちょろちょろっと流したその髪型は、かなり可愛くて、唯は目を輝かせながら感動する。

「レオンって何してる人なの?」

自分でも、こんなにきれいに、しかも短時間で髪をまとめることは出来ない。レオンの髪が長いわけでもなく、ましてやレオンは男だ。
女の子のヘアアレンジがココまでうまい理由がわからなかった。

「何で、こんなにセットとか上手なの?美容師さんでもないのに」

聞くとレオンは笑った。

「別に美容師じゃなくても、女の子の髪のセットしたりすることくらいあるぜ?」

言われて首をかしげた。

「そうなの?」

「そうなの」

レオンに言われて、ふーん、と納得したものの、どんな状況だ?と少し考えてみた。


レオンは一人っ子。それは稜夜が昨日言っていた。となると、誰の髪をいじるんだろう。母親?それとも彼女?


と思ったとき、ちくっと胸が痛くなった。


…いやいや、なんで?


怪訝そうな表情を浮かべると、レオンが不思議そうに顔を覗き込んできた。

「どうした?一人で百面相なんかして」

慌てて首を横に振る。

「なんでも!なんでもないよ」

そう言うと、ドライヤー達を元の場所に片付け、近くにかけてあった半袖ロング丈のパーカーを手に取り、行こう、とレオンと一緒に、家を出た。
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