Symphony V
車で約1時間くらい走ったところにある小さな美術館。いつもはほとんど人がくることはないこの場所に、珍しく人影がちらほらと見えた。

「やっぱ、世界の名作ともなると、こんな田舎でも人が集まるんだー」

はぁ、と感心する唯に、レオンが不思議そうに聞いてきた。

「田舎田舎って言ってるけど…そんなに田舎がいやなのか?」

聞かれてうーん、と唸る。

「田舎が嫌いなんじゃないけど…不便というか、不満はあるかな」

入り口で、レオンが2枚のチケットを受付をしているお姉さんに渡した。

「ごゆっくりどうぞ」

にっこりと笑顔で見送られながら、中に入った。

「なにが嫌なんだ?こんなにいいところなのに」

聞かれて苦笑いを浮かべながら、唯は肩をすくめた。

「そりゃ、好きなアーティストのライブとか滅多にないし、遊ぶとこもあんまりないし。服だって、電車に乗って出掛けなきゃ買うとこないし」

レオンはよくわからない、といった表情をする。

「まぁ、不便だってこと。人は少ないから、あんまり混雑することないし、そこはありがたいけどね」

ははっと笑うと、レオンはそうか、と、呟いた。
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