Symphony V
「わぁ…凄い!」

中に入って少し進むと、様々な絵画が壁一面に飾られていた。
別に、美術に詳しいわけでもないし、そういった感覚が鋭いわけではない。

けど。

今まで教科書の中でしかみたことのなかった名画達は、その存在をしっかりとアピールしていて、唯は一瞬にして目を奪われていった。

「へぇ…この作品もきてたんだ」

ゆっくりと、レオンと一緒に1枚1枚じっくりと鑑賞していく。

絵のタイトルや、作者はわからなくても、観たことはある作品がいくつもあって、退屈することはなかった。

「ね、この作品は?」

唯がレオンに聞くと、あぁ、とレオンは説明してくれる。

「この作品はね…」

レオンの説明は、分かりやすくて面白い。美術の先生の話なんかより、よっぽど頭に入ってきた。

約1時間たったところで、このイベントのメインコーナーに到着した。

「………」

言葉が出なかった。きらびやかな宝石のちりばめられた装飾品が、部屋の中に飾られている。

少しだけ暗めに設定されている照明のせいか、その輝きはさらに増して感じられた。

入り口で立ち尽くしていた唯の肩を、レオンはそっと抱くと、優しくエスコートしながら、中へといざなった。

2人の間で、会話は何もなかった。
会話なんていらなかった。

ただ静かに、美しく辺りに佇む芸術品を、しっかりと感じ、愛でていった。
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