Symphony V
「はぁ……」

感嘆の息をもらす唯。レオンが飲み物を持って隣に座る。

「はい、どうぞ」

紙コップに入ったお茶を渡される。

「あ、ありがとう」

お茶を受けとると、唯はこくっと一口、口に入れた。冷たいお茶が、身体中に染み渡っていく。

美術館のロビーにあった長椅子に座って、2人は少し休憩していた。

素晴らしい美術品たちの余韻を噛み締めながら、ぼーっと入っていく人たちを眺める。

「いろんな人達がきてるね」

老夫婦に小さな子連れの夫婦。同い年くらいのカップルや、女の子達。


…あれ?


3人組の女の子のグループで、ふと目が止まった。見たことのある子だな、と思っていたが、すぐに誰かわかった。

「あ、里香」

呟くと、レオンがえ?っと聞き返してきた。

「あ、ううん、友達がいたから」

里香は唯に気づいていなかったみたいで、そのまま前を通りすぎていった。
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