Vanilla Essence



電話越しからでも分かってしまう、珠希の楽しそうな声。おそらく、クスクスと笑っているのだろう。

紗由美は、そんな珠希が見ているわけではないのだが、頬を膨らませた。


「別に普通だよ。それにあの人、ちょっと冷たいし」


そう言ったあとに思い出したのは、彼の表情だった。





最初は無愛想だったのに(というか怒ってた)、紗由美に見せた笑顔は、柔らかくて優しくて。
大人っぽいんだけど、幼さが残っていて…吸い込まれそうな……


『そう?あんなもんでしょ?』



男のことをあまり分かっていない珠希は(紗由美もだけど)、疑問符をつけて言う。



『あの人なら、あんなことにはならないと思うよ』



< 20 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop