mixed Emotion

うさぎのしっぽ

新しい生活にも慣れてきた6月の初旬。

今日はいつもより早く目が覚めた。

念入りに歯を磨いて髪を梳く。

肩まで伸びた髪は梅雨のせいか


なかなか思い通りにまとまってくれない


二つ結びにしようか‥‥いや、でも子供っぽいかもしれない。


化粧もいつもの倍くらい時間をかける。

「ゆりちゃん、早くしないと遅れるわよ〜」


キッチンの方から聞こえてくるママの声。


「分かってるよー!あっ今日遅くなるからね。」

そう言い放つと私は玄関のドアを勢いよく閉めた。

「えっ?どこに?」と聞き返している声には、


聞こえない振りをした。

何を隠そう今日は人生初めての合コンなのだ。

『コンパなんてろくな人いない』

『出会いが雑で嫌』


なんて雑誌では書かれていたけど、

女子校でアルバイトもしていない私には


とっても素敵な単語に聞こえてくる。


どんな形でもいいから、出会いが欲しいんだもん


「あれ、ゆり気合入ってるね〜」

朝はそう言ってた美玖も、

放課後になると下睫毛にまでマスカラを塗って鏡の前で笑顔の練習。


結婚宣言している彼がいるのに薄情なやつだ。

「あんまり力むと引かれちゃうよ」

慣れているのか、理香ちゃんはいつもと変わりなく落ち着いている。


もともとこの合コンの種は理香ちゃんなんだ。



登校中、知らない男の子に名前とアドレスの書いた紙を渡されて、


ゴミ箱に捨てようとしていたところを美玖が発見したのだ。


「竹中章吾って清栄校の王子様じゃん!もったいない!」


興奮して美玖は理香ちゃんがもらった紙切れを奪い取った。


「2人とも彼氏いないんだし、ここは1つ合コンを開催してもらおう!」


「美玖は浮気性だなぁ。」

あきれ顔で私はそう言ったけど、実は満更でもなかった。


果たして王子様が合コンなんて開いてくれるのかと不安さえ感じたが、


意外にもあっさり承諾してくれたらしい。

お目当ては理香ちゃんだろうけど…。

彼に興味はないけど、
2人が一緒ならおもしろそうだからいいよって、

理香ちゃんは笑って言った。
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