アザレアの花束を
ハッキリと真っ直ぐな台詞は玲さんの揺らぐことのない決意を思い知らされた。
その言葉が本気なんだとわかってしまったから、俺は何も言えず動けなくなってしまった。
「行くな! わかっているのか、お前がしようとしてることは―――……」
「……玲。どうしたの、そんなに声を荒げるなんて、らしくないわよ」
いつになく、感情を露にしている玲さんを止めるように、海さんが外から帰ってきた。
玲さんは海さんの方へ振り返っても、声を荒げることを止めなかった。
「そうもなるさ! 呂依は、あの人間の女に……っ」
「そこまでよ」
バッサリと切り捨てたような口調の海さん。
ぐっと言葉を飲み込んで、じっと海さんを睨む玲さん。
そのふたりの様子は、静かな威圧感があり迫力があった。
「詳しいことは呂依から訊く。玲は部屋へ戻っていなさい」
「……呂依を甘やかすなよ」
そう冷たく言い放つと、玲さんはおとなしく部屋へ戻っていった。
その様子を見送ると、海さんはため息をついた。
「……さて」