キミは許婚


「佐原明さまでよろしいでしょうか?」


「……へ?」



男の人は涼やかな声で銀縁眼鏡の奥の瞳を細め、右手を胸に当てながらあたしに話しかけてきた。



紳士的な雰囲気は態度でも現れていた。



でもなぜかその微笑みに親近感らしきものを感じる。



「そうです。佐原明ですが……あなたは?」



あたしの疑いの目をより一層微笑んで受け止める。




……この感じ……。
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